2010年12月31日金曜日

2010

個人的に良かったアルバムベスト10
・My Beautiful Dark Twisted Fantasy / Kanye West
・Contra / Vampire Weekend
・How I Got Over / The Roots
B.o.B Presents: The Adventures Of Bobby Ray / B.O.B
・Wake Up! / John Legend & The Roots
・Soldier of Love / Sade
・Relayted / Gayngs
・The Fall / Gorillaz
・Pink Friday / Nicki Minaj
・Man On the Moon two: The Legend of Mr.Rager / Kid Cudi


カニエは本当に期待通りのクラシック。収録曲を一曲づつ毎週公開してゆくという斬新な方法も面白かった。ランナウェイから最終曲にかけての高揚感が素晴らしい。ロックは、あまり熱心に聴いた方ではないがヴァンパイアウィークエンドには心を奪われた。フォーマットとしてはアフロビートmeetsロックという方法論だが、その背後にあるしなやかな感性に今後も期待したい。賛辞になるのかわからないが、シーンに対する影響力として、ポストレディオヘッドに一番近いバンドではないかと考える。Gayingsは新人とは言えないが、シャーデーをカバーするセンスやAORという親父の加齢臭バリバリなジャンルに新しい息吹を吹き込んだ斬新な視点を支持したい。最後の最後に発表されたゴリラズのthe Fallはファンクラブのみのフリーダウンロードということだったが、iPadのみで作成したというシンプルではあるがボトム感のあるビートに陰鬱なデーモンの歌声が乗るというファーストアルバムの原点に立ち返った作品という印象を受けた。傑作ではないが佳作。
シャーデーのSolider of Loveも相変わらず抑制の効いた作風ではあるが、ブラックミュージックにおける独特の佇まいはさすがだし、ラッパー達によるビートジャックや賛辞ともどもを含んでの評価。ここ数年がっかり作品が続いたThe RootsのHow I Got Overも久々の快作だった。生バンドとしての暖かさという原点に立ち戻った有機的な作品だった。姉妹作品としてジョンレジェンドとのジョイントアルバムもランクイン。
若手では、B.O.Bとカディ、ニッキーミナージュ。B.o.Bは音楽誌では散々にこきおろされていたが、ヒップホップ的な純粋主義がもてはやされるなかでの潔いまでのクロスオーバー的作風はあえて評価されるべきだと思う。「B.o.Bはアイドルでもはやラッパーじゃない!」なんていうヘッズの批判に答えるべく12月に突如発表されたミックステープの質の高さを見ても、今後の動きが最も気になるアーティストの一人である。カディさんはファーストからのコンセプトをしっかりと保持するストイックな佇まいに敬意を表したい。サイケデリックとヒップホップの異種配合がますます深化している。ニッキーミナージュは予想以上だった。ヤングマネー一派として、あの手のサウス風の内容であれば一切食指は動かなかったが、ハウス等の最先端のクラブミュージックを取り入れたサウンドは今年のUS作品の中でもひたすら異彩を放っていたと思う。ルックスからガガと比較されがちだが、ガガなんかよりもよっぽど先鋭的な音だと思う。
以上、今年最も印象に残った10枚をセレクトしてみた。




個人的によかったミックステープ
・The Free EP / Actual Proof
・BLVCK Diamond Life / Droop-E
・Stay Hungry Stay Foolish / ham-R
・Friday Night Lights / J-Cole
・Overly Dedicated / Kendrick Lamar
・K.I.D.S / Mac Miller
・Laced Up / Raz Fresco
・Paradise Falls / Mansions On the Moon
・Viki Leekx / M.I.A.


今年だけで一体何枚のミックステープが世に出たのだろう。
若手であればデビュー前のプロモーションとして、ベテランはラッパーとしての力量を示すための表現方法としてミックステープを発表することが、もはや「あたりまえ」となった今、リミックスや他人のビートをジャックした「寄せ集め」ではなく、自前のビートに書き下ろしのラップをのせ、構成も一枚のアルバムとして作り込まれた作品が多く発表されるようになった。ミックステープの発表に至るまでも、数曲をリークさせ、トラックリストを発表、場合によってはティザーまでYouTube上で公開するといった、もはや販促グッズの域を超えたものとなっているのは興味深い。リルウェインやドレイクによってミックステープという表現技法が爆発的に拡散していったのが2009年ならば、その存在意義や価値が大きく変質していったのが2010年ではないかと思う。


J ColeやKendrick Lamar等は正規発表のアルバムが無いにも関わらず、ミックステープに対する注目度はメジャー級であるといえる。前者は、Roc Nation(Jay-Zのレーベル)が後ろ盾になっていることも大きいが今年ベストともいえる質のミックステープだった。後者のコンプトンの新人Kenrick Lamarは無料公開の前に一度iTunes Storeで有料プレミア(それでも600円くらい)を行った後に、全く同じ内容を無料公開するというユニークな手法で注目を集めた。そもそもCDの売れないこの時代に、Amazon.comのデジタル販売を見てもアルバムの単価は500円ほどに値崩れを起こしており、アーティスト自身によるネット上でのミックステープの公開が、正規アルバムの公開にとって変わる日もそれほど遠くないような気がする。(「レコード産業の崩壊は間近」と預言したトム・ヨーク御大のお言葉がいよいよ現実味を増してきた。)


ネットインフラの確立とPCによる編集作業の手軽さは十代の若手ラッパー達にもますます作品発表の機会を広げている。ピッツバーグの白人キッズのマックミラーはミックステープ発表後も収録曲のPVを次々に発表することでファンを楽しませ、散々延期した後にやっとのことで新作ミックステープを発表したカナダのRaz Frescoもビデオや曲のリークを少しづつ行うことでミックステープへの期待を高める一方で、自身のサイトでビートを売るなど商魂もたくましい。ともに、10代の若者であることはおどろきだ。


また、このミックステープ狂想曲はここ日本にも飛び火し、瞬く間にフリーダウンロードやリークといった言葉が飛び交うようになった。なかでもham-Rのミックステープの連作発表は注目に値する。上にも書いたが、カニエウェストが毎週新曲をただで発表する方法を行って以来、USでもスウィズビーツやティンバランドといった大物プロデューサーがさっそく真似を始めたが、ham-Rはなんとミックステープを毎月発表するとラップした。この言葉は偽りではなく、これまでで通算5枚のミックステープが発表されている。そのうち、一枚(Future Vintage)は全編オリジナルビートで構成されたアルバムとも言うべき大作であった。そもそもUSとは異なり、ヒップホップ自体がドル箱産業ではない日本で無料で音源を公開することはリスキーであるとの見方もあると思うのだが、ham-Rをはじめとした多くの若手ラッパーはこぞってミックステープやフリーダウンロードの曲を公開しており、Jラップルネサンスとでもいうべきムーブメントになりつつある。


また、ミックステープという表現手段はヒップホップ以外のジャンルにも広がりつつある。マンションオンザムーンはどちらかというとエレクトロポップの出身であるが、デビュー前からディプロの主宰でミックステープが発表され話題を呼んだ。M.I.A.も大晦日にミックステープを発表した。ヴァンパイアウィークエンドのようなバンドがアルバム発表前にリミックス音源でミックステープを発表する日も近いのかもしれない。2011年もミックステープシーンの動向にも注目したい。

2010年11月15日月曜日

(mixtape) 49Minutes Before Falling Asleep



Track List 

1. Dead Flag Blues / God Speed You! Black Emperor
2. As a Child / Eyes of Autumn
3. 孤独の発明 / toe
4. Green Grass of Tunnel / Mum
5. Eros / Tortoise
6. Hope Is Happiness / Pedro
7. Waltz for Aidan / Mogwai
8. Zorzal / Juana Moina
9. Hafsol / Sigur Ros
10. Some Summers They Drop Like Flys / Dirty Three
11. For a Running Dog / Pan American
12. Survival of the Shittest / Gang Gang Dance
13. Reich: Electric Counterpoint - Fast / Pat Metheny
14. Kill Your Co-Workers / Flying Lotus
15. TNT / Tortoise
16. Black Spider / Mogwai
17. Clap / 54-71
18. Return to Hot Chicken / Yo La Tengo
19. A Song For Our Fathers / Explosions in The Sky
20. Stanley Kubrick / Mogwai
21. Hibari / Ryuichi Sakamoto
22. Dead Flag Blues / God Speed You! Black Emperor




    
DL (pass: godspeed)

2010年10月31日日曜日

(mixtape) Secret Hangout Vol.3 / V.A.



フライングロータスやラスコーが参加しているコンピ。無料。正直、二人の音源目当てで落としたけど、他の曲も断然かっこいい。とりあえずDLしてみてください。

Link

2010年10月28日木曜日

(mixtape) Paradise Falls / Mansions On the Moon (presented by DJ Benzi and Diplo)


Mansions on The Moonは全く知らなかったけど、Pnuma Trio というUSのジャムバンドのメンバー二人とシンガーソングライターのTedの3人組。まだ、音源の発売は無く、現在デビューアルバム作成中とのこと。今回のmixtapeは、既に発表している既発曲に加えて、リミックスを収録したもの。テクノ、エレクトロ、そしてダブステップと現行のクラブミュージックのエッセンスが詰まったものですが、例えばオリジナル曲のLove is Going to Destroy MeとかShe makes me feelにあるような独特の叙情性(クラブミュージックというよりはデスキャブのようなインディーバンドのそれ)は、シンガーソングライターのTedの貢献が大きいような気がします。インディーロックの音楽と、テクノやヒップホップ等のクラブミュージックとのミクスチャーは今に始まった話しではないと思いますが、単純に1+1=2的な単純なものから、近年はより複雑なものへと発展してきているように思います。ヒップホップにおいては、とみにそれを感じるわけです。例えば、ロックミュージックとのコラボレーションと言えば、Run DMC×エアロスミスが古典的ですが、ハードロックのギターリフをブレイクビーツに合わせるという手法です。これが形骸化してミクスチャーロックというものが産まれたと思うのですが、最近のロックとのコラボというのはそんな単純なものではない。例えば、カニエウェストやキッドカディなどは、積極的にインディーロックバンドとのコラボを模索しており、例えばキッドカディはファーストアルバムのPursuit of Happinessで、MGMTとRatatattとの競演をしていますが、単に曲の一部をサンプリングするという手法ではなく(言い換えればロックがヒップホップに譲歩する)、曲の構成の段階から両者が関わることで、サイケデリックヒップホップとでもいうべき独特のアートフォームを形成するに至っているわけです。
話しが長くなりましたが、Mansions on the Moonを聴いて、同様の感動を覚えました。最新鋭のクラブサウンドにインディーロックの叙情性がしなやかに絡んでいるという感じでしょうか。新たなミクスチャーミュージックの誕生といっても過言ではないかもしれません。

DL Link
Artist Link

(参考)
Love is Going to Destroy Me / Mansions on The Moon

She makes me feel  / Mansions on The Moon

Walk This Way / Run DMC & Aero Smith

Pursuit of Happiness / Kid Cudi

2010年10月19日火曜日

百円ディグ 第0回

行きつけの中古CDショップの100円コーナーで今日、見つけた良盤を紹介。失敗することも多いんだけど、当たりだとめちゃくちゃ嬉しいんだよね。

1. μ-ziq vs the auteurs / μ-ziq





μ-ziqは、エイフェックスツイン経由で知って、今まで何枚かアルバムを聴いてきたけどいまいちしっくりこなかった。このアルバムは、イギリスのthe auteurs というオルタナバンドの曲をμ-ziqがリミックスするというもの。恥ずかしながら、元ネタのauteursは未聴なんですが、変態μ-ziqがいわゆる真っ当なリミックスをするわけがなく(笑)。しかしながら、予想に反して、原曲にあったであろう牧歌性を上手に残しながら、ギターリフやアコギのカッティングのサンプリングの上にμ-ziqが若干インダストリアルなブレイクビーツを乗せていくという構成になっていて、非常に面白い。この数年後に、エイフェックスもリミックス集を出すけど、あれほどはちゃめちゃじゃ無い。元ネタを上手にいかしていて、そこに不釣り合いなμ-ziqの変態ビートが乗っかるから余計にシュール。ちなみにauteursのフロントマンの人は、本盤を「ルーリードでいえば、メタルマシーンミュージックみたいなもんさ」と、褒めてるのか、貶しているのかよくわからんコメントをしているらしい。(笑)

2. Ten Songs about You / Ben & Jason




ロンドン出身の2人組の三枚目。たしか、ファーストがでた頃、渋谷陽一のワールドロックナウで曲を聴いて、おっと思ったのを覚えている。まだ、ロッキンオンを欠かさず買ってた頃で、広告が乗っていたのも覚えている。すごく欲しかったけどお金が無くて諦めて、結局今に至っていたところで百円コーナーにて発見。当時は、ベルセバと比較されていたけど、本作を聴くかぎり、歌声はベンズの頃の、いやもっと限定的に言うとHigh and Dryのトムヨークですね。ファルセットはMUSEのマシューベラミーを彷彿とさせる時もある。歌声も素晴らしんだけど、ソングライティングも卓越してて、どの曲も珠玉の名曲とはいかないまでも、飽きずに聴ける佳曲が続く。シンガーソングライターのアルバムは沢山聴いてきたけど、これはかなり好きなアルバムです。これからもずっと聴いていけそうな名盤に出会う事が出来ました。








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(photo) Live in London / MF Doom













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2010年10月18日月曜日

(NEWS) Albiniファッションについて語る




ちょっと前の記事なんだけど、アンダーグラウンドのキング、スティーブ・アルビニがGQ誌というファッション雑誌のインタビューの一部。
このインタビューでは、メジャーレーベルのゲフィンに移籍して活動してきたソニックユースを批判したことで話題になったんだけど、個人的にはこっちのが笑える。

“I think fashion is repulsive. The whole idea that someone else can make clothing that is supposed to be in style and make other people look good is ridiculous. It sickens me to think that there is an industry that plays to the low self-esteem of the general public. I would like the fashion industry to collapse. I think it plays to the most superficial, most insecure parts of human nature. I hope GQ as a magazine fails. I hope that all of these people who make a living by looking pretty are eventually made destitute or forced to do something of substance. At least pornography has a function.”

簡単にまとめると、ファッション業界なんていうのは上っ面だけを取り繕う馬鹿げた業界で早く滅びればいいとおっしゃっています。そして、ファッション雑誌であるGQ誌にむかって、GQも早く廃刊することを望むよ!とおっしゃっています。服飾も一つの文化であるという見方もある(実際、キムゴードンはエックスガールのデザイナーもやってたよね?)と思うのですが、アルビニ氏はバッサリと切り捨てています。ここまで潔いと笑えます。


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